冷たい北風吹く

夜の階段できれいな白猫に出会う。

暗闇なので雄か雌か見分けは付かず、しかし雄ならハンサム、雌なら別嬪さん。
首輪はない。すらりと長い尻尾をゆらゆら、
ゆったりとした足取りで階段を上ってくるところに偶然出くわしたんだった。
視線を合わせるのは威嚇を意味すると言うから、なるべく目を伏せながら立ち止まる。
すると白猫も目を細めてゆっくり立ち止まった。
尻尾をぱたぱたさせるでもなくクネクネさせるでもなく、ゆらゆら。

白猫が向かおうとしていた先には小さな甲虫がジイジイ、うるさく羽ばたいている。
気になる音なのでそちらに興味があると見えてこちらは先を急ごうと階段を降りたが、
ついと振り返って見たら、やはり白猫も振り返ってこちらを見ていた。
思わず小さくお辞儀をしたが、何だか不思議な気持ちになった。

わずか数十秒くらいの出来事でした。



そう言えば、去年はもう少し先にある坂を下る途中で狸の子供に出くわした。
揚げ過ぎの豚カツに泥ゴボウを生やしたような薄汚い四ツ足の生き物が
犬みたいにぼんやり歩いて茂みへ入っていくのを見て、変な気持ちで茂みを覗いたら
やっぱり判然としない中途半端な表情の生き物がこちらを見上げているのだった。

その後、薄々化かされるんじゃないかと訝しみながらスーパーに行って
大豆で出来たグルテンミートなるものをかごに放り込んだのを覚えている。
乾きものをそのまま味わうのが好きなのでシャゴシャゴ言いながら食べたけど、
凍み豆腐や乾いた湯葉を食べるのとさして変わらないような味がした。
肉と化かす迄には至らないものの、炒り豆を噛み締めた時と同じ甘味があってなかなか。



それにしても、何処の猫だったんだろう。
迷い猫だろうか。
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